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ハロウィン話というかハロウィン数日前話。


トッズ護衛中。




人気の無い衣裳部屋で魔法使い帽にこっそりチャレンジ中の愛情ルートモゼーラにレハト遭遇、凄く似合うから着て一緒に行こうと誘われてモゼーラ超動揺。 お菓子を押し付けられ逃げられ、子ども扱いにレハト落ち込む。


って感じの話も思いつきはしたもののまとまらず。 可愛いモゼーラさん書いてみたい。




……どうしてこんな空気になっているんだろう。 

目の前の二人を見て、僕は思わず溜息をつきそうになる。 
せっかくののんびりした午後に見せたい物があるといってトッズが来てくれたから、一緒にお茶でも飲もうと思っただけなのに。 
満面の笑みでの二人のやり取りは表面上は会話が弾んでるように見えなくも無いけれど、どちらの目も全く笑っていない。 

「…あーあー、喉が渇いたなー。 レハトも大変ね。侍従が気が利かないと、しなくて良い苦労も多いでしょ」

トッズの言葉にローニカの片眉が跳ね上がり、眉間にくっきりとした縦皺が入る。 
…なんだか雲行きが怪しい。 慌てて僕もお茶を頼んでみると、一転してにこやかな返事が返ってきたのでちょっとだけほっとした。

「かしこまりましたレハト様。 私は所用がございますのですぐにサニャに運ばせますね」

「いいねー用事。 このまま二度と現れないでくれたら更にいいんだけどねえ」

退出するローニカの後姿を見ながら、卓に頬杖をついてにやにやするトッズに彼とも仲良くして欲しい、と言うと渋い顔をされた。 

「いや”とも”って。 それじゃまるでレハトとじじいが同列みたいじゃない。 勘弁してよ、俺のレハトへの気持ちはそんな雑で粗末なものじゃないのよ? …なんなら今ここで俺の想いの深さを見せちゃおっか?」

それで思い出した。 確かトッズは何か見せたい物を持ってきたはず。 
僕の言葉に今度は苦笑いが返って来た。 
…元々の用事を思い出させてあげたのに、何でそんな反応をされるんだろう。

「…レハトは相変わらずだなあ。 まあいいけどね、そういう所も可愛いし。 …それじゃあご期待にお応えして……じゃーん。 見て見て、本日の目玉商品!」

言いながら鞄を探っていたトッズが僕に差し出してきたのはカボチャだ。 確かに形も色艶も申し分ない。 
…でもやけに軽い。 ひっくり返してみると穴が開いて肝心の中身が全部、掻き出されてしまっている。 皮だけだ。

「あはは、レハト様本職の目になっちゃってるね。 これはねー、提灯! 夜になったら中に明かりを入れてそこの窓辺にでも飾ると雰囲気出るんじゃないかな」

「あー、今度のお祭りの飾りでございますですね!」

ローニカに代わってお茶を運んできたサニャが声を上げる。 お祭り?

「あ、レハト様はご存じなかったでございますか? 次の市はいつもと違ってこういう魔物の形のカボチャとか蜘蛛の巣とか何かで飾りつけをしてお店の人もお客さんも仮装するのでございます。 …サニャは正直、ちょっと不気味だと思うのですけれど」

言われて改めてカボチャを見る。 確かに可愛い様な恐ろしい様な何ともいえない顔がついている。 これが夜に光ってたら結構怖いかもしれない。

「そうそう、仮装。 さっき衣裳部屋の前通ったらレハト様に衣装を御用意したいからぜひお越し下さいって言付け頼まれちゃった。 魔女でも猫でも何でもござれだって」

二人が口々に説明してくれるのを聞いていると楽しそうではあるけれど、魔物の格好をしたり飾ったり、村ではちょっと考えられない様なお祭りみたいだ。 そんな事をして誰か怒ったりしないのだろうか。

「どうかな、神殿はいい顔しないのかもね。 後どうしても警備の都合もあるし、そんなに大規模にはなんないみたいね。 顔の隠れる仮装は禁止、玩具でも武器の携帯禁止ってね。  …あ、レハト様ひょっとして ちょっと怖くなっちゃってる? だいじょーぶ、単なるお遊びだし、レハト様にはこの頼れる格好いいトッズさんがついてるし! お側に控えてございますですよ。 なんなら寝台の中まででも」

そんな事を言ってサニャにたしなめられている。 ローニカの時とは違って、サニャには強く出たりしないようだ。

「あーそうだ、そうそうレハト様、中庭まで行ってみる? もう準備とか始まってると思うよ。 ね?そうしよう」

慌てた声に背中を押される様にして中庭に出てみると、そこは数日前とは様変わりしていた。 
あちこちに組み立て中らしい飾り物や荷物の山が出来ている。 
…サニャが言っていた通りお墓とか、不気味なものも多い。 

「結構気合入ってるね。 こっちのは中庭全体の飾り付けに使う奴かな。 …!!!」

近くの小山に掛けてあった覆いを持ち上げたトッズが固まった。 顔をこわばらせて中をじっと見ている。 
後ろから覗き込むとそこには色々な品物に埋もれる様に人の頭蓋骨が一つ、転がっていた。 
薄闇の中の恨めし気なからっぽの目に見上げられて、僕は思わずトッズに抱きついて服に顔を埋めてしまう。 

「…」

それきり、トッズは何も言わない。 そのうちしがみついたままの体が小さく震えだして、僕はますます不安になる。 

どうしたんだろう。 深呼吸してから思い切って顔を上げてみる。 
見えてきたのは覆いを握りしめたままの手と陽の下では明らかに作り物とわかる骨、…そしてくつくつと洩れ出す笑い声を止めようする度に小刻みに動くトッズの肩。

「うわ、ごめん、ごめんって。 つい出来心っていうか、レハトがどんな反応するかなーとか…いやごめん、
お詫びにいい事教えてあげる、ね? だから許してレハト様ーお願い」

ほっとしたのと恥ずかしいのとで顔が赤くなるのが自分でもわかる。 
隠す様に後ろを向いて腹立ち紛れに歩き出すと、後ろから謝りながら追いかけてくる音がする。 
木々の間に入った辺りで前に回り込んできたからにらんでやろうと思ったのに、 両手を合わせて上目遣いをされて吹き出してしまった。 その僕を見てトッズも笑顔になる。

…まだ何となく気が収まらない筈なのに、こうやって笑いかけられるともうどうでも良くなってしまう。 …何だかずるい。

「ああ、焦った。許してもらえなかったらどうしようかと思った。 そうそう、いい事ね。 お祭りになったらさ、周りの人にトリックオアトリートって言ってみなよ」

?? 余りに奇妙な言葉に思わず聞き返す。 
なんでも仮装をしてそれを言えばお菓子をもらったり、くれない相手にいたずらしたりできるとっても便利な言葉らしい。

トリックオアトリート、試しに口の中で呟いてみるとトッズがはい、とお菓子をくれた。 まだお祭りじゃないのに。

「うん、まあ、練習練習。 …せっかくだから、いたずらの方の練習もしちゃう? ささ、どうぞどうぞ。 どーんと、遠慮なく」

その場に腰を下ろして手招きされる。
 
……いたずらって急に言われても。 
思い出すのはこの間ヴァイルに ローニカのヒゲを抜くように言われた時の事だけど、トッズのヒゲは流石に抜くには短すぎる。

「え、なになに? レハトってばどこ見てるの? やだなあ、怖い怖い」

言葉のわりになんだか物凄く嬉しそうだ。 

「あ、もしかしたら目つぶった方がいい? あーこわい、変ないたずらしたりしないでよ」

にやにやしながらしっかり目をつぶってしまったので、近づいてしげしげと見てみる。 
…やっぱり引っ張るのは無理そうだ。 かといって他には何も思いつかない。 

仕方ないので後ろに回って首にぎゅっと抱きついて、いつもされてるみたいに頭にあごを乗せてみた。 なんだかいつも見下ろされてるトッズを見下ろしているみたいで、ちょっとだけ気分がいい。

…そんな事を考えていたらそのトッズが深々と溜息をついた。 覗き込むと何故か心底がっかりした顔をしている。

「…あーあ。 レハト意外に駆け引き上手? それともここまで込みでのいたずら? いいけど。 いいんだけど。 …これはこれで悪くはない訳だしね」

ぽんぽんと伸ばした手で頭を優しく叩かれる。 くすぐったさに笑う僕を自分も笑顔になって見上げてくるトッズが、一瞬考え込む様な表情をして……不意ににやりと今度は意地の悪い笑みを浮かべた。 
嫌な予感を覚えて離そうとした腕ががっちり押さえ込まれてしまう。 

「…じゃあ次は俺の番ね。 トリックオアトリート、レハト?」

ずるい。 準備してない。 少し前まで知らなかったのに。 抗議してみたものの、全部却下される。 
失敗した。 さっきもらったお菓子を食べずに取っておけば良かった。 

「お菓子くれないならいたずらしちゃうぞー。 さーて、どうしよっかなあ」

後ろにいた僕を引き寄せた強い腕にそのまま抱え込まれてしまう。 
耳元に近づけられた唇に目を閉じて、と囁かれた途端心臓が跳ね上がった。 なんだろう。 胸が苦しい。 この声に逆らえない。 言われるがままに目を閉じる僕に、トッズがくすりと笑う。


「………!!」

カツン、その時不意に上の方でやけに硬い音と声にならない叫びがして肩から手が離れた。 目を開けるとトッズが両手で頭を押さえてうずくまっている。

「………いや本気で割れるって……割る気だなあの野郎…」

呻くトッズの傍らに何か落ちているのを見て拾い上げる。 
…飴だ。 包み紙にくるまれた、丸くて大きな飴。 
トッズの手は確かに僕の両肩にかかって体も寄せていたのに、一体どうやって、それにどこから取り出したんだろう。 凄い。 魔術みたいだ。 

もう一回やって見せて欲しいと頼んだら物凄い勢いで断られた。 がっかりした僕を見て、慌てた様に手を振って口の中で何か言っている。

「いやほら、こういうのはわからない内が華っていうか、ね? 何度も見るとつまらないもんだって、うん。…たぶんだけど」

…それなら仕方ない。 今日は練習だったんだし、本番の時もう一度見られれば。 僕の言葉に、なぜか トッズは青ざめたようだった。


部屋に戻ってからもサニャやローニカとひとしきりお祭りの話で盛り上がる。

意外な事に、ローニカもとても楽しみにしているらしい。 仮装をするのかと尋ねてみたらにこやかにまさか、と答えが返ってくる。

「私の年齢で流石にそこまではいたしませんよ。 …そうではなくて、お菓子を用意して、皆さんに差し上げるのが楽しみなのですよ。 …今年はいささか当てもございますし」

そう言うローニカの眼の奥が一瞬だけ光った気がした。 もう一度見たらいつも通りだったからたぶん気のせいだろう。

「レハト様も当日はぜひ楽しんでらしてくださいね。 勿論、レハト様用にお菓子を沢山ご用意しておきますから」

思わず笑顔になった僕を見て、サニャもローニカもにこにこしている。 
トッズもお店を出すらしいし、ヴァイルと回るのも良いかもしれない。 衣装も必要だし、今度こそトッズがどうやって飴を出したのか見破りたいし、そうだ、それまでにいたずらも色々考えておかないと。 ああ、お祭りの日が待ちきれない。


こうして、一日が終わった。
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