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カビ祭様に提出したものその2。 加筆修正などはしていません。
トッズ憎悪Aエンド後。


元は少しずつ毒を盛ってレハトの命を奪おうとしたトッズが、自分の手からレハトが離れていく事に耐えられない自分に気付いたり弱ったレハトの姿に逆上したりだとかでその首を絞めにかかるも葛藤の末去っていく、みたいな結構どうしようもない話でした。
でもせっかくのお祭に参加させていただくのにそんな話持ち込んで良いものか、考えている内に不安になってきてマイルドな感じに変更。
憎悪Aにしてはぬるめだけどトッズだしね、他にきっと素敵な憎悪作品が沢山あるからまぎれちゃうよね、とか思ってたら小説部門は憎悪これだけで、モニタ前で一人冷や汗かいたお祭り当日の思い出。




頭が燃えるように熱かった。 なのに全身は冷え切っていておまけに節々が痛い。 シーツの冷たい部分に押し付けようと顔を動かしているとそれだけで眩暈がした。
忙しさについ無理をしたところに最近猛威を振るっている流行り病にやられたらしい。 症状は軽いとはいえないが、薬を飲んでとにかく安静にしているようにと医士の声が遠くに聞こえる。


こうして床に伏せるのは子供の時以来だ。 ぼうっとした頭に取り止めもなくあの頃の思い出がよみがえってくる。 ローニカの気遣わしげな顔、サニャが剥いてくれた果物の味。 誰が送ってくれた物だったか、枕元に飾られた大きな花束。 それからそれよりずっとささやかで、でも何より嬉しかったトッズがくれた花とそこに付けられたリボン。
…もう大分昔のような気がする。

リボンの方は元気になってからも、彼が以前のように笑ってくれなくなってからも、折に触れ取り出しては眺めていた。 …今は引き出しの奥にしまったまま、時折その取っ手に手を掛けることはあっても開ける事は無い。

どうにか頭を動かし、閉まったままの窓を見る。 もう何日トッズに会っていないだろう。 心配と不安で胸が古傷の様に鈍く痛む。 護衛の仕事で命を落とすのでは、二度と顔を見せてくれないのでは、姿を見ない間ずっとそう気を揉み続け、会えば今度はその目の変わらぬ冷たさに絶望する、何度それを繰り返してきた事か。 トッズがそうやって踊らされる私の姿を楽しんでいるとわかっていてもどうにもならなかった。 届く事は無いと知ってはいてもやはり私は彼を愛していて。 どんなに触れてくる手が冷たくとも、伸ばされる限りは縋っていたかった。私に、まだその力が残っている内は。

目が熱くなり、喉の奥が強張る。 けれどもう涙は出なかった。 流し尽くしたのだろう。 代わりに小さく苦い笑い声が洩れる。


寵愛者が人より優れているなんて悪い冗談だ。 私はこんなにも愚かで弱く、そのせいで失ったものに尚もしがみつこうとしているというのに。




…いつの間にか寝入っていた様だった。 夢の中でもまた、子供の頃に戻っていた気がする。 気付けば静かな室内は既に薄暗く、遠くでわずかに雨の音がした。 熱は引いておらず、体のだるいのも変わらない。

喉の乾きに気付き、人を呼ぼうかと顔を上げて思わずびくりとした。 すぐ側に気配も無くトッズが立ってこちらを見下ろしていた。

「…」

無表情のまま口を引き結んでじっと見つめてくる。 目が合っても何も言おうとしない。いつも底冷えのする光を放つその目が、何故か今は暗く重く沈んでいる様に見えた。


どうかしたのかと尋ねるとトッズは僅かに身動ぎ、ふっと小さく息を漏らした。 口元ににやにやした笑いが、瞳に見慣れた醒めた色が戻り、普段と変わらない表情になる。

「イヤだな、決まってるじゃない。突然倒れたって聞いて心配でたまらずに飛んできたんだって。 …そうそう、これ、お見舞いね」

軽い口調で言いながら取り出された物に私の気持ちは沈む。 あの時と同じ一輪の、しかし色も形もまるで違う花。リボンも勿論ついていない。 …期待などもう捨てた筈だった。なのにどこかでまだ期待していた。 思い出だけは彼の中でも自分と同じ意味を持っていてほしい、 差し出してくれる花だけはあの頃のまま変わらない物であってほしいと。
失望を表に出さないようにしながら受け取り、礼を言う。 私の心の動きなどお見通しだろうが、落胆する姿を見せて喜ばせたくはなかった。

そう思いながら顔を上げるとしかしそこにはまた先程と同じ、表情の無いトッズの顔があった。
口元に浮かんだ笑みもいつの間にか消えてただ私を見据えている。 何かいつもと違う。

「…寵愛者様からは病の方が逃げていくもんだと思ってたよ」

呟きに近い声が洩れた。 自分が喋っているのにも気付いていない様な低い声。
なんと答えたものか考えあぐねていると不意に彼が手を伸ばしてきた。喉元を掴むその指には力が籠もってはおらず、冷たい感触がむしろ心地良い。

「…お前の方から離れていくなんて許すとでも…」

続く言葉は余りに小さく早口で、本当にそう言ったかどうかもわからなかった。 僅かに力の籠もった指先が肌に食い込む。

何故か怖いとは思わなかった。 私が怖かったのはトッズを失う事、そして諦めと絶望の中で自分の気持ちがいつか変わっていってしまう事。 今なら。 私は表情の無いトッズの顔に笑いかけ、喉元の手を両手で包む。 今なら、まだ間に合う。 あの時彼が言ったように私がこうしてあるのはトッズのおかげなのだから。 だからトッズが望んでくれるのなら、このまま私を完全に貴方のものになるようにして欲しい。

ふとトッズの表情に苦いものがかすめた。 手を放し、無言で背を向けるとあっという間に姿を消してしまう。強まる雨音の響く部屋に私だけが残された。

急に寒さを感じ、首まで布団を引き上げる。 痛みは無かったが、息をするとその首に僅かな違和感が残った。

…叶わないのだろうか。 いくつも胸に抱いては手放した、他のものと同じようにこの最後の願いも。

溜息をついた時、手が何かに触れる。 トッズが持ってきてくれた花だ。 あの時の物とは色も形も違う。 けれど美しく咲き誇っていて、鼻に近づけると甘くかぐわしい香りがした。

花を持ったまま、トッズが立ち去った窓を見る。 …彼は考え違いをしている。 私から離れていく事など有り得無いのに。思いの形が変わってしまっても、この命が無くなる時が来ても私の全ては彼のものなのに。

けれどその気持ちが伝わる日は来ないだろう。 私が、愚かさと弱さ故にそうしてしまった。
だから私はこれからも彼の側にいよう。 心の全てが燃えつき朽ちてしまっても、彼が望んでくれる限りは。
きっとこれは贖罪ではない。 只私の欲が深すぎて、トッズを本当に諦める事など出来そうに無いだけだ。


自分の考えに小さく笑い、目を閉じて花を抱え込む。
眠ってももう、あの頃の夢を見る事はないだろう。
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