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愛情Aエンド後。 篭りが開けてすぐくらい。


甘やかしたいだろうし、役に立ちたいだろうしで。

結果、全然喧嘩にはなっていない感じに。




川べりを歩きながら、僕の口から何回目かもわからない溜息が洩れる。 ばしゃっという音に顔を上げると水面で大きな魚が跳ねたところだった。 
荷物の中に釣り針があった筈だから後で魚釣りに挑戦してみようか、ほんの少し前トッズとそんな会話をしていたのを思い出し、また大きな溜息が一つこぼれてしまう。 

川を渡って吹き抜けていく風が頬に心地良くて、顔が随分火照っていたようやく事に気がついた。 近くの流れが段差で小さな滝になっているのを見つけてその場に腰を下ろし、小さな船みたいに進む木の葉や陽の残りを受けて輝く水を見ているうちに少しずつ冷静さが戻ってくる。

何であんな事を言ってしまったんだろう。 

自分の尖った物言いを思い出すと更に気持ちが落ち込んでしまう。トッズはただ篭りが開けたばかりの僕を気遣ってくれてるだけだってちゃんとわかっているのに。


旅の間中、僕はトッズに頼りっぱなしだ。 村と城の中しか知らないからどこへ向かったらいいのかわからないし、路銀を稼ぐ手立ても持っていない。 
追っ手の気配になんてもちろん気付ける訳が無い。 全部、トッズが一人で解決してくれている。 …だからせめて、水汲みとか薪拾いとか、僕に出来る事くらいはさせて欲しいのに。

「ああ、いいのいいの、そんなの俺がやるってば。 今日も沢山歩いたんだし、レハトは少し休んでてよ。 このトッズさんにぜーんぶ任せちゃって。ね?」

そんな風に言われて嬉しくない訳じゃないけど、余りにも何もさせてもらえずにいると、段々自分が何でこうしているのかわからなくなってくる。 
子供の頃ならまだしも、もう分化も済んでちゃんとトッズと同じ大人なのに。 僕だってトッズの為に何かしたい。 
これじゃまるで世話をしてもらいに城を出たみたいだ。 確かにそんなに出来ることは無いけど、でも子供扱いしないで欲しい。
 
そんなつもりじゃなかったのに、訴えているうちにどんどん自分が情けなく思えてきて、気付けば随分きつい口調になっていた。 見るとトッズは言い返す事もせずただ困った顔をしていて、そうしたら途端にいたたまれなくなってこうして飛び出してきてしまった。

……トッズは怒ってるだろうか。
 
一旦頭が冷えてくると今度は不安がこみ上げてくる。 僕を大事にしてくれたのに、それを全部否定するような事を言ったりして、今頃、呆れられているかもしれない。 
すぐ戻ってちゃんと謝らないと。

そう思い立ち上がろうとした時、後ろからがさがさと茂みを掻き分ける音がして、僕は中腰のまま固まってしまう。
数日前、近くの村でこの辺りには危険な獣はいないと聞いてきたばかりだけど。

……獣ならまだいい、でももし城からの追っ手だったりしたらトッズから離れて自分では身を守れない。 
動けずにいる僕の真横の茂みが大きく揺れる。

「…あー良かった、探しちゃったよーレハト。 もっと遠くに行ってたらどうしようかと思ったー」

軽く息を弾ませながら現れたトッズの姿と、その顔に浮かぶいつも通りの表情にほっとして思わず涙ぐんでしまい慌てて目の端を拭う。 今は泣いてる場合じゃない。 
さっきはごめんなさい、一息に謝ってうつむくと隣に来たトッズにぎゅっと抱きしめられる。

「ううん、俺が悪かったよ。 別に子供扱いしてたつもりじゃないんだけど。レハトの気持ち、考えてなかった。ごめんな」

…ああもう、笑顔でそんな風に言うのはずるい。 

このまま甘えてしまいそうになる。
首を振って僕のほうこそ悪かったから、と言い募ると頭の上で小さく笑う声がして、身を屈めたトッズの唇に言葉を封じられる。

「レハトも強情なんだから。じゃ、二人ともおんなじだけ悪かったって事で。これで仲直りしよ、ね?」

やっぱりずるい。 近づけられたままの顔を思わずにらむと再び唇が重ねられる。

怒ってないの、尋ねるとトッズは意外そうに目を丸くした後、くしゃっと表情を崩して満面に笑みを浮かべる。

「全然?だってレハト俺の事思って言ってくれたんでしょ。 飛び出してったから慌てちゃったけど怒ったりなんかしてないよ?…ありがとね、レハト」

ようやく成人できたから追いつこうとして頑張ってるのに、やっぱりトッズの方がずっとずっと大人だ。少し背伸びした位じゃ全然届かない。
それがちょっと悔しくなってきてぎゅっと力を込めて抱きつく。 
篭りの前程じゃないけれど今も高い位置にある首に手を回してしがみつくみたいにしていたら、ぼそりと呟かれた言葉が耳に入ってきた。

「…子供扱いできればある意味楽なんだけどねえ。 そうじゃないから困っちゃうんだよなあ」

見るとトッズの頬が少し赤らんでいる。 どういう意味か聞こうとすると、肩に置いた手で微妙な距離を開けられた。

「うん、まあ、それはおいおいって事で。 とりあえずは一旦離れよっか。 …じゃないとせっかく押さえてる色んなものがここで一気に決壊しちゃいそうだから。 それでも全然いいんだけど、やっぱりあんまりは急ぎたくないっていうか」

何の事かさっぱりわからないまま言われた通りに離れると、トッズは安心した様な残念な様な何ともいえない顔をして遠い方を見ている。

「…。 じゃあまあ、そろそろ戻ろっか。 ちょっと寒くなってきたしね」

頭に血が上ったまま随分来てしまったと思っていたら実際はそうでもなかったらしく、歩くうちにおこした炎から上がる煙が見えてくる。 

そういえば食事の支度をどちらがするのかがそもそものきっかけだった。
思い出して今日はぜひ僕に任せて欲しいと頼むと、繋いでない方の手で髪をかいてトッズはうーんとうなる。

「それなんだけど、レハトも一人になる時間が必要かなって思ったから手持ち無沙汰でさ、探しに行く前に大体終わらせちゃったんだよね。 楽しみにしてるからまた今度お願いしてもいいかな」

それなら仕方が無い。 
だったらせめて後片付け位は、言い終える前にぐいと腕を引かれる。

「そうね、でもまあ皿の一枚や二枚ついでだから。 それより今日のはちょっと自信作なんだよねー。 すぐ分けるからほら、座って座って」

…どうやら子供扱いされてる訳ではないらしいのだけど。 
なんだか僕の要求が通る日は当分来ない気がして仕方がない。

上機嫌ににこにこしているトッズを見上げ、僕は聞こえない様に小さく溜息をついたのだった。

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