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トッズ愛情Aエンド後。 

エンド後はトッズもちょっとはレハトに作ってないところとか、弱い部分も見せるようになっていくといいなという願望と妄想。

レハトにちょっとセリフあります。





「嘘」

一瞬の沈黙の後、確信に満ちた声でそう返されて、驚いたというよりはむしろ面食らって俺は思わず隣に立つレハトの目を見返した。



昨夜の雨が無かったみたいに今日は朝早くから良く晴れている。 
雲ひとつ無い青空がどこまでも広がってて、強い日差しのせいで頭の奥が鈍く痛い。 

いつものように二人連れ立って歩くうちにレハトの口数が段々減ってきて、代わりに俺の方をそれとなく窺ったり眉を寄せて何か考えたりしているから頃合いを見てどうしたのか尋ねてみた。 
ぱっとしない景色が延々続いてさすがに飽きたかな、なんて呑気に考えてたら投げかけられたのはちょっと予想外の質問、しかもそれに答えたら俺が嘘をついてるなんて悲しそうな顔で俯かれた。 

「ええー嘘じゃないって。 ほんとにほんと、俺絶好調だってば。 今ならどこぞの爺の髭を引っこ抜いてからもう一度逆さに植え直せそうな気がするもんね。 いや実演して見せらんないのが残念だなあ」

そう言って笑って見せてもレハトは曇った表情のまま頑なに首を振って足を止めたその場から動こうとしない。  これまでなら何か気がかりがある時はこうして安心させてあげれば納得してくれてたんだけどな。 
信用されなくなる様な変な事も勿論した覚えないし。

どうしたものかと思っていると不意に背筋がぞくぞくしてきた。
思わず身震いしそうになるのをなんとかこらえる。 

うん、レハトが言う通り、俺間違いなく体調崩して熱出てる。 
急だったとはいえ昨日雨に長くあたり過ぎたのはやっぱりまずかった。 とはいえ、経験上これ位なら次の町に着いてから休んでも別に問題ない筈だ。 
レハトだってそろそろ屋根のある場所が恋しいだろうし、心配してもらえるのは嬉しいけど俺のちょっとした熱くらいで時間を取る訳にもいかないだろう。 

何とか説得してしまおうと口を開きかけると俺の機先を制する様に言葉がかぶせられた。 話したくない事がある時は癖が出るからすぐわかる、そう言われて寒気とは違うもので内心ひやりとする。
癖?まさか。 

「やだなあ、俺癖って言われるほど何回もレハトに嘘なんてついて無いよ? そんな風に見られてたなんて傷つくなあ」

気にはなるけど、とりあえずここで押し問答してても始まらない。 溜息をつきつつ大袈裟にうなだれてみせるとレハトがそういう意味じゃなくて、とうろたえてる。

「ほんと?あー良かった、疑われてなくて。 じゃあ安心したとこで気を取り直してしゅっぱーつ」

元気良く声を上げるとつられて二、三歩歩き出しかけてから、はっとして慌てて立ち止まってる。 
うん。 素直でわかりやすい、いつも通りのレハトだ。 
別に何を疑ってた訳でも無いけどなんとなくほっとする。

密偵に癖なんてあったらその時点でおしまいだ。 それにこう言ったらなんだけど、レハトに心を読まれる様じゃ正直命が幾つあっても足りやしない。 
そう思いつつも胸の中がざわついて落ち着かない。 現に具合が悪いのも正直に答えてないのも見破られてるらしい。 朝からずっと普段通りに、なんなら普段よりほんの気持ち調子良いくらいの感じで振舞ってたつもりだったんだけど。


そんな事を考えてたら焦れた様な表情でレハトが手を伸ばしてきた。 
振り払ったり避けたりするのもおかしいから仕方無くそのままでいると、額にあてがわれたいつもより冷たい感触が気持ち良い。 やっぱり、呟いて向けられた目になんとなく居心地が悪くなって意味も無く笑ってみせる。 

なんなんだろうな、どうも旗色が悪い。 

「いやーもう、こんな人気の無いとこずっと二人っきりで歩いてるとありとあらゆる妄想が止まんなくって体温上がっちゃってさ。 ほんと、若いって困っちゃうよねー」

口に出してはみたものの、これじゃどう聞いても苦し紛れの言い訳だ。 レハトもそう思ったらしく小さく首を振ってとにかく休まないと駄目だと、進行方向とは逆の今いる田舎道をはずれた水辺に程近い場所を指して俺の手を引く。

「いやほんと、だいじょぶだって。 …確かにちょっと熱っぽいけど、ちょっとだし。 こんなことで動けなくなる程ヤワじゃないし。ね?」


……なんでだろう、こうしてるとガキの頃を思い出す。 
俺達の考える事なんて全部お見通しの大人達の前で内心ビクついてるのを隠そうとしながら虚勢を張って、平然としてる振りの下でお前はダメだと宣告されない様に必死で祈ってた頃の事を。
 
あの時みたいに試されてる訳でもその後どうこうなるって訳でもないのに、追い詰められてるみたいでどうにも落着かない。
これなら初めから熱があるって宣言しとけば良かったかな。 事を大きくしないようにと思ったのが裏目に出たかもしれない。 

その時不意に俺の腕を引っ張っていたレハトの手から力が抜けて、そのまま離れていく。 見ると悄然とした様子でうなだれていて、ごめんなさい、と突然に謝るものだからこっちが慌ててしまう。 聞けばどうやら昨夜の雨から自分を庇ったせいで俺が具合を悪くしたのだと気に病んでいるらしい。

……俺が好きでしただけの事なのに。 俺がレハトが雨に濡れるのが嫌だっただけ、だから別に何にも気にしないでいいのに。 
そう言い聞かせてもレハトの心は晴れない様だ。 代わりに両頬を手で挟んで引き寄せられ、せめて看病くらいさせて欲しいと潤んだ瞳で哀願される。


ああもう、困っちゃうよね。 

これが手管なら幾らでもあしらえるんだけどな。 こんな真っ直ぐな目に覗き込まれて、こんなにも心配されて。 しかも誤魔化そうとしてもその手は通じないって言われるんだからこりゃ完全にお手上げだよね。

そのつもりなら今からでも言いくるめるのは本当は簡単だ。 本気でやれば勿論レハトが口で俺に勝てる訳が無い。 …そう、なんだけども。

俺が倒れたら全部が駄目になるだけ、だから限界超えて無理する気はさらさら無いし、今までの経験でこれっくらいなら動いても問題ないのはわかっている。 でも頬を包んだままのレハトの手と柔らかな声が気持ち良くて、何だか背負ってる荷物が変に重い様な気がしてきた。 
意識の隅に押しやってずっと無視してきたけど体も正直だるい。

……いいのかな。 いいかな、今日だけなら。

「…じゃあレハトがそこまで言うんだし。 せっかくだからお言葉に甘えさせていただいちゃおうかな」

したいようにさせてやればレハトも気が済むだろうし、なんて本当は自分の為の言い訳だってわかってるけど胸の中で呟いて頷く。 
譲歩した形に持ち込んだから負けじゃない。 うん、これも大分つまんない言い訳だけど、今日はもうこんなものにでも縋っているしかないみたいだ。


周囲の安全だけは念入りに確かめてから丁度良い木陰を見つけて荷を下ろす。 木にもたれる様に座り込むと思わず溜息が出て意外と自分が消耗していたのに気付かされた。 
旅を続けてるうちにすっかりやり方を覚えたレハトが手際よく野営の準備を整えて、合間に額にあてがった手巾を水に浸しては絞って取り替えてくれる。

「あー…そういえばさっき言ってた癖って?」

内心気になってしょうがなかった事を尋ねてみると、首を傾げて考え込んだ末に癖というより雰囲気かも、と曖昧な答えが返ってきた。
 
あなたの事をずっと見てきたからわかるんだと思う、なんて笑顔で言われたらもうこっちは苦笑いして黙るしかない。 
そのまま隣に座って髪を撫でられたりカップに注いだ水を飲ませてもらったりしてる内に段々どんな顔をしたらいいのかわからなくなってくる。 
…熱が出てて良かった。 多分俺熱がなくても顔真っ赤になってる。 確かにこういうの、生まれて初めての経験だけど、それにしても。

「……俺さ、なんか昔より弱くなったみたいな気がするんだけど」

自分に止めさすつもりなのか、気付いたら手巾を浸しに行ったレハトの背中にそんなことまで口走っていた。
返事される前に急いで目を閉じて、寝言か独り言だったふりをする。
 
思わず、とか気付いたら、とかあっちゃダメな事が今日はいくらなんでも多過ぎる。

今日だけだ。 全部、今日だけ。 体調さえ良くなればちゃんといつも通りに振舞える。 
襟元を緩めて風が通る様にしてくれようとするレハトの手のくすぐったさに笑いそうになるのをこらえながら、俺はその考えを魔術師の呪文みたいに何度も胸の中で繰り返して、そうじゃなかったらどうしようか、と隅の方から囁いてくる声を無理矢理掻き消すと一切何も聞かなかった事にした。
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