FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ゲーム上で無理だったので妄想で補完。

ルージョン憎悪Aエンド直後、トッズは割ととばっちり。

本気でろくでもない話な上に死んでますし血塗れでどうしようもないです。 


とりあえずはルージョンに全力で謝りたい。





衝撃と、ややあって膝から伝わってきた鈍い痛みでようやく自分が床にくずおれていたのだと気がついた。
立ち上がろうとしてついた手も震えていて、色を失うまできつく握りしめてみてもどうしても止められない。

これからはずっと自分の番だと、勝ち誇った宣告が肌で直に感じる程の焼け付く様な視線と共に頭の上から降ってくる。
不自然なまでにしんと静まり返った中響くその以前とはまるで別人の声音を聞きながら、僕は身動きも、瞬きすらも忘れて目の前に投げ出された“それ”をただ見つめ続ける。


信じられない。
信じられない。

本当に?
……本当に?

「本当だとも、寵愛者様。 全部、お前自身が望んで引き起こした事さ。 わかってるだろう?」

頭の中でぐるぐると回り続ける言葉を自分でも気付かないうちに口に出していたらしい。 
一歩前に進み出ると僕の方に身を屈め、ルージョンは体温を一切感じさせない底冷えのする声で柔らかく優しく、まるで聞き分けのない子供に言い含める様に語りかけてきた。

少し見ない間にすっかりやつれた青白い顔と、熾にも似た暗く暗く燃え上がる瞳。 
強張らせた手を両方とも朱に染めて立つ彼女は、ぎくしゃくとぎこちなくしか動かない体をどうにか起こして見上げた僕の視線に応えて笑みの形に歪んだ口元から白い歯をちらりと覗かせたかと思うと、不意に深くかぶっていたフードが髪から滑り落ちるのにも構わず身をのけぞらせ笑い出した。
時折ふつりと途切れてはまた始まる、かすれて不安定ながらもひどく満足気なその哄笑を聞けば、彼女が望み、思い描いていた正にその通りに僕は今振舞っているのだろうと熱く痺れてどうも上手く回っていない頭でも容易に想像がついた。


まるで死人の声だ、そう思いながら僕の目は再びルージョンの足元に転がる“それ”へと引き戻される。
動かない。 息も無い。 切り離され捨てられて瞬きせず、喋らず、もう笑いもしない、もの。

まだどこか夢の中にいるような気持ちを拭えないまま彼の側に寄ろうとして、床についた方の手がぬるりとした何かに滑る。
その不快な感触にふと我に返り見回せば、辺りは既に一面が血の海だった。
赤い。 手を剣の柄にかけたままうつぶせに倒れ、ぴくりとも動かない傍らの衛士の身体の下からじわりじわりと溢れ続けるものと、鋭利とは言いがたい断面から未だ滴っているものが混じり広がって、向かい合う僕達の足元を染めている。
逆に何故気付かずにいられたのか、立ち込める臭いはむせ返るほどだった。
頬や髪にはねてこびり付いた血が乾き始めるにつれ、むず痒さに似た感覚が肌の上を這う。


立ち上がろうとすれば体を支えられず転んでしまいそうな気がして這うのに近い格好で傍らに行き、トッズ、変わり果てた彼に呼びかける。 
トッズ。 本当にこれは現実なの?

「…ああ、全く。 つくづく見物だよ、その顔。 今ならお前の気持ちもようくわかるってもんだ。 どうだい、自分自身で味わってみてさ?」

まるで糸が切れる様に唐突に笑うのを止めたルージョンが一歩退いて鼻を鳴らすと、苛立たしげに顔を歪めてそう吐き捨てる。


……なんて。 


それを聞いた途端湧き上がってきた激しい思いは言葉となり僕の中で大きく膨れ上がって、危うくそのまま口をついて出てしまいそうになる。 慌てて俯き唇を噛み締めてこらえたものの、嗚咽にも似た呻きが洩れるのまではどうにも止められなかった。

なんて。
なんて素直で純粋で、そしてどこまで単純なのだろう。
成し遂げたのは復讐だと頭から信じ込んでいる。 僕の全身を駆け巡っているこの感情がかつての自分のそれと本当に同じかどうか、欠片ほどにも疑おうとしない。

そっけない態度の下から覗くその純粋さは確かにまぶしく好ましく思えて、実際僕は彼女に夢中だった。
けれど醒めてしまった今、偽りの勝利に酔いしれる姿は滑稽を通り越してなんと哀れに見える事だろう。
 

いや、それよりもまだ真実を悟られてしまう訳にはいかない。 ルージョンが機会を待ち、頭の中で状景を思い浮かべ、きっと繰り返し何度も恋人の様に抱きしめ温めてその思いを育てていたのと同じく、僕もまたこんな日の訪れだけをただずっと願い続けてきたのだから。 待ち焦がれていたこの瞬間をまだ全然味わえていない。
そう気付いた僕は慌てて更にうなだれて髪で表情を隠し、汚れていない方の手で口元を覆う。 そうしないとこれ以上こみ上げる笑いを我慢できそうになかった。
気持ちが昂ぶる余り体の震えが止まらない。


ようやく、そして初めて触れた肌はまだ温もりを残していて柔らかかった。 なぞるようにそっと髭を撫でてみると指先が少しくすぐったくて、その感触すら愛おしくてたまらない。 一瞬の出来事だったのだろう、目は驚きにまだ見開いたままだったけれどそれ以外は不思議な位普段と変わり無く、今にもいつものへらへらした笑顔を作って喋り出しそうだった。

僕の愛する人。 愛しい愛しい、でも決して僕のものにはなってくれなかっただろう愛しくて憎いトッズ。
ついに手に入れた。
それもこんなにも完璧で、これ以上は望めない最高の形で。
ルージョンからは見えない様に気をつけながら視線が合う角度に抱え直し、そっと微笑みかける。

この唇から溢れ出す声の響きも巧みな話術も全部大好きだったけれど。 
知りたい彼自身の肝心な事は曖昧にぼかして見えなくしてしまうから邪魔だった。
けれどこれでもう二度と僕の心をかき乱すどんな嘘も紡がれはしない。
地位や立場に縛られて自由に動けない僕を置いてどこへでも消えてしまえる足もそれを助ける手も、余計なものは皆なくなった。
どこにも行かせない。 逃がさない。 貴方の全ては永遠に僕のもの。


思えば初めに抱いていた感情は決して良いものではなかった。 彼は確かに便利で有能な道具だったけれど余りにも僕自身に似ている上頭が回りすぎて危険だと感じていたし、忠告の皮を纏って吐き出される皮肉も一々癇に障った。
それが何がきっかけだったのか、何時からかとにかく好きで好きでたまらなくなっていた。

けれど僕も僕を見るトッズの瞳に浮かぶ淀んだ光が意味するものがなんであるかには勿論気付いていた。
自分自身が少し前まではきっと同じ様に彼を見ていた筈なのだから当然だ。

この想いを告げようものなら間違いなく彼は二度と僕の前に姿を現さなくなるだろう。
かといってただ黙っていた所で望みが叶う訳もない。
強引に手に入れようにも子供の僕が取れる手段など限られていたし、まだおぼつかない魔術でどうにかするには裏の世界を生きてきた彼には余りにも隙がなかった。

もう手詰まりかと、打つ手はないまま会えなくなるのかと焦っていたのに。

今なら分かる。 どうして関わり過ぎたと判断していた筈のルージョンを、絶好の機会のあの時手にかける事無く城に戻ったりしたのか。 欠けた陶器の壷を繋ぎ合わせるように全てはここにぴったりと収まる。


僕自身では成し得なかった仕事をこうしてやり遂げてくれたルージョンには幾ら感謝してもし足りない。
この恩に一体どうやって報いたらいいだろう。

手に入れた筈の甘い果実はただのまやかしに過ぎないのだと真実を教えてあげようか。
それともこの上ない満足感に包まれたままで、辛く苦しく報われないばかりだった人生から開放してあげようか。
表面上はこれまで通りを装ってはいても、ルージョンの中の流れが確かに弱まり不安定になっているのを僕は感じ取っていた。 相当に無理をしているのだろう。 感情に左右されやすい彼女の事、あの一件が影響を与えていない訳がない。 現に自分でわかっているのかどうか、高らかに笑いながら何度か顔をまるで泣き出しそうに歪め、声にならない声で合間に老魔女を呼ぶ様に唇を動かしていたのをさっき目にしたばかりだ。


とはいえ彼女にはまだ使い道がある。 トッズとは違いルージョンの気質だったら僕は良く知っている。 
もう少しこのまま上手く踊らせておけば、きっと幾つかの面倒事でこの先役に立ってくれるだろう。
僕がもがき苦しむのを眺めるのが彼女の目的なら、僕の方も何も焦る必要はない。


不意に遠くの方で悲鳴と怒声が湧き起こる。 誰かがこの事態にようやく気付いた様だった。身動いだルージョンが唇を引き結び声のした方を睨みつける。


……この先の事態がどう転び、どう動くにせよ暫くは楽しく過ごせそうだ。
 
次第に近づいてきた足音と鎧同士が触れ合って上がる耳障りな金属音を聞きながら、僕は血で汚れた床に座り込んだまま少しずつ冷えていくトッズを腕に優しく抱え、次に打つ手をどうしようかと頭を巡らせながら一人腹の中で笑いを堪えていた。
 
スポンサーサイト

コメント - 0

新着記事一覧
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。