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もう完全に時期をはずした感のある年明けの話。 

愛情Aエンド後。 新年の行事の辺りは捏造。

しっかりした感じのレハトが喋ります。

そういえばレハトの性格は特に決まったものはありません。 話毎にバラバラです。


人の足で踏み固められた粗末な道を外れた木立ちの中、太い木の影に身を潜め寄り添って眠る二つの姿は不意に聞こえてきた音にびくりとして飛び起きた。 

重く鈍い、それでいてどこか晴れがましい音。 
近くの村で鳴らされている鐘だと気付き、体を強張らせていた二人は顔を見合わせやがてどちらからともなくくすくすと笑い始める。

「あー焦った。 いや、今のは流石に驚いた。 …そっか、新年の鐘ね。 年が明けたんだなあ」

「うん、あれからもう一年経ったんだね。 何だか長かった様であっという間だった気がする」

目覚めると同時に反射的に背中に庇っていたレハトを腕の中へと抱え直し、安堵の溜息をつくとトッズはその言葉に深々と頷く。

「ほんとに、ね。 このレハトが一年前は子供だったんだもんなあ。 今となってはもうなんだか不思議な気がしちゃうよねー」

「…ちょっと、どこ触って言ってるの。 ていうかそれ、何についての話?」

星々の姿が薄れかけた空で月から変わったばかりの太陽がぼんやりとした輝きを放っている。 そのまだ弱い明かりを頼りに呆れ顔で見上げてきたレハトは怪訝そうに小さく首を傾げ、手を伸ばしてくる。

「なんだか随分ご機嫌なんだね」

外気にさらされ冷えた頬が温かく柔らかな手のひらで包まれて、自然トッズの表情は更に緩んできてしまう。

「いやあ、だってさ。 やっぱり改めて嬉しくって。 …レハトにはもっと他の道だってあった訳だから。 なのにそういうの全部捨てて俺と一緒に来てくれて今日で丁度一周年、って思ったらそりゃあご機嫌にもなっちゃうって」

「…他の道なんて無かったよ」

その言葉に返ってくるのはどこまでも真っ直ぐなまなざしと静かな、しかしきっぱりとした声。

「誰になんて言われても絶対トッズと一緒にいるって決めてた。 それ以外の選択肢なんて初めから考えに入れてない」

「…うん、そうね。うん」

何度かしばたいた目を細め、小さく笑うとトッズは腕の中のレハトを引き寄せてその肩に顔を埋める。
迷いの無い強さがまぶしくすら感じられる。 大人になってもレハトはあの頃から少しも変わらない。

その純粋さが疎ましくて、初めの内はお兄さんが現実ってもんを教えてあげるよなんて考えていたのだから皮肉な話だ。 
思えば無謀としか言い様のない逃避行に全てを賭ける決心をしてから今日まで、不安に駆られそうになった時はいつも揺らぐ事無く見つめてくれるこのまなざしに救われてきた。 
先に立って歩いている様で、本当はきっと自分の方こそがレハトに導かれている。

「…。 やっぱり最初は育った村に御挨拶かな。 でもレハトはディットンにも行ってみたいかもしれないし。 どうせなら海とか壁だって見せてあげたいし。 どこかに落ち着いたら住む家はこじんまりして可愛い感じで、いっつも手繋いで買い物に行くから御近所に冷やかされちゃったりして。 レハトが作った作物を俺が売りに行くとかいいかもなあ。 でも何よりまず毎日絶対ずーっと一緒にいよう。 じじいにも誰にも邪魔されずにそれこそ朝から晩までずーっと」

「え、何? いきなりどうしたの」

肩口に顔を押し付けたまま突然喋り始めたトッズにレハトが訝し気な声で問い掛けてくる。

「いやね、城ん中で陰険なじじいにいたぶられながら将来の幸せな結婚生活の想像なんかして耐えてたの思い出してさ。 でもやっぱ実際にはそこまで順調にっていうのは無理があるよなあ。 まあこうしていられるだけで有り難いんだからあんまり欲張ってもい」

「だめだめ。 その先言ったら」

伸ばした手で今度はトッズの口を塞いで遮り、レハトは大きく首を振る。

「せっかくの夢なんだから叶えよう? もちろん今すぐは無理な事ばっかりだけど、諦めるなんてもったいないよ。 ね?」   

これからも困難で辛い道のりが続くと知っているだろうに、そう言ってレハトは自分の言葉を全く疑っていない様に屈託無く笑う。 

「……だよね。 考えてみたら最後のなんかもう叶ってるんだもんね。 あー、何か新年っぽくていいなあ。 今年一年…じゃムリだけど目標立てて頑張ろうってね。 うんうん、やる気出てきちゃうなあ。 そういうレハトもなにかしたい事とかあるんでしょ?」

その笑顔を見ているとトッズの方まで全て実現できる気がしてきてしまうのだからまったく始末に負えない。 
尋ねられて勢い込んで頷いたレハトが口を開いた時、朝を迎え人々の活動が本格的になってきたのか風向きが変わった為か、聞こえてきた村からの物音に二人の注意は引き付けられる。 
ざわめきに混ざって響く軽やかで楽しげな楽器の音とはしゃぐ子供達の歓声。

「ああ、旅芸人が来てるのかもね。 ほら、新年のお祝いのダンス、大人になったら好きな人誘って踊れるって村にいる時憧れたりしなかった?」

「!ダンス! 舞踏会の時トッズと踊れたらいいのにっていつも思ってた!」

目を輝かせて立ち上がったレハトが期待感もあらわにトッズを振り返る。

「あはは、そうね、盛り上がったところでまぎれて踊ってきちゃおうか。 振舞い酒もあるかもしれないしね。 レハトの夢が早々に叶うなんてこりゃ幸先良い感じだなあ。 いい一年になりそうね」

「うん、二人でいい一年にしようね」

お前と一緒にいられる限り悪い一年になりようがないけど、胸の中で呟くと差し伸べられた手を握ってレハトの隣に立ち、そのまま佇んで村のあるらしき方を見つめ暫し未来へと思いを巡らせる。


新しい年の穏やかな陽が、二人の行く先を静かに照らしていた。
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